満ち欠けの物語

結果は現実逃避ポエミーブログ

ファニーのこと。~音楽劇マリウスを観て⑤~

【注意】音楽劇マリウスのネタバレ、および映画「ファニー」のネタバレを含みます。未観賞の方はご注意ください。また、レポではないので音楽劇マリウスの詳細なレポートを読みたい方のご希望にも沿えません。ご了承ください。

 

ファニー(瀧本ファニー)が大好きです。

美人だし明るいし健気だし美声だし可憐だし清楚だし溌剌としているし美織ちゃんだし。

でもね、好きだからこそ湧き上がるふつふつとした感情。

ファニーいい女すぎない?

いい女は好きです。素敵です、憧れます。

だけどファニー、あんたいい女がすぎて都合のいいマドンナになっちまってるよ、マリウスと一緒になって一生あいつのおしめ替えてやるつもりかい?あんたはまだ若くて街一番の綺麗なおじょうさんだ。もっと自分の幸せを考えなくちゃならないよ…って私の中のマルセーユの市場で魚売ってるおばちゃんが出てきてしまう。

話がだいぶ逸れましたが、ファニーの気持ちが置き去りにされているのが引っかかっていて、ズバリとタイトルにファニーの名前が冠されている映画「ファニー」を観てみることにしたのです。

 

というわけで映画と舞台ごちゃ混ぜにした感想です。

 

まず第一に、映画と比べて舞台だとファニーの物語の大事なところだいぶ省かれてない???

マリウスがマルセーユを去り幸せですとか言いながら船に乗っていた1年半、ファニーにはたくさんの変化が訪れる。

可愛らしい少女から大人の女性へと変化した舞台2幕のファニーはあまり幸せそうではなくて、それが引っかかっていたのだけど、映画のファニーはマリウスへの愛という苦悩を抱えながらもそれなりに幸せそうでほっとします。

映画で好きなのは、パニスとの結婚が決まるシーンと、ファニーがマリウスとの子どもを身ごもっているとセザールが知ってしまうシーン。この部分、舞台でも描いてほしかったなぁ。ファニーの賢明さが素敵だし、舞台ラストのセザールとマリウスとのやりとりにも繋がってくるのですが…。

 

映画ファニーは舞台ファニーと比べるとより積極的で女性としての魅力を発揮しつつ、決断すると度胸が座っています。

舞台ファニーはもう少し清純で耐える女性の側面が強いといいますか…。

 

ものすごく穿った見方なんですけど、舞台ファニーが再会したマリウスに言い放つ「パニスは結婚してからも指一本も触れようとはしない」という言葉、あれってパニスがファニーの気持ちを思いやってることの表れではなくて、むしろ女になってしまったファニーは年をとっているパニスには恐ろしく、男としてではなくてあくまで坊やの父親としてファニーと接することで自分の面子を守ろうとしているのではないの?とまで考えてモヤーっとなってしまい…。だからこそファニーもあんな余計な発言をしたのでは…とか。

それと、千穐楽では「私にはお別れしてくれないの?」にセリフが変わっていたのですが、公演2日目に観たときには街を去ろうとするマリウスに「キスしてくれないの?」と言っていて、ヒェーなんで今ここでそんなこと言うんだよーやめてー!!という気持ちになると同時に、マリウスの前では母ではなく妻でもなく恋していた頃のただひとりの女でいようとしたファニーの意地を感じたんですよね。

 

そういえば映画でもパニスはファニーとの夫婦生活がなかったようですが、パニスがもうちょっと性欲もあるジジイっぽく描かれていて(表現が汚い)更に「妻はそういうことを望まなかった」と言っているのでちゃんとファニーのことを女として、妻としても認めていて、その上で彼女を尊重して手を出さなかったんだな、とわかりなんだか少し腹落ちしました。

 

マリウスに出てくる男たちって、マリウスをはじめとしてみんな考え方が少し甘いというか、場当たりというか、リスク含めて将来のことはあまり考えていないのでいざその未来が現実になったときに悲しみや苦悩が生まれてしまったように思います。

対して女性であるファニーは、マリウスと1か月過ごすだけでもうマリウスを引き止め続けることがお互いの幸せにならないと悟って送り出します。

90年も昔の世界の話ですし昭和の日本の家族を長い間観察し描いてらした山田監督の舞台でもあり、現代の価値観とはやや違うというのは百も承知ですがこれだけは言いたい。

いや男アホすぎやろ!!!女は賢くなきゃアカンのか!!!

似非関西弁が出てしまうくらいにはこのあたり思い返してイラッとしてしまうんです…。私は別に思慮深くもないし周囲への優しさも勤勉さもなくとりえもない人間なんですけど、それでも普通に女として生きてるし、自分としては今楽しい生活送れてる(好き勝手生きてるからかも知れない)ので、より一層女性に賢さを求めるような、もしくは男性に「無邪気さ」を強いるような物語に違和感を覚えてしまうのだと思います。

しかも男が無邪気に夢へと突き進み女は耐えた結果みんなが少しずつ不幸になるという結末へと向かうなんて。なんでだよみんな自分が下した決断の結果少しずつ寂しい思いもしたけど今は幸せ!それでいいだろ!!?

 

非常に取り乱しました。

一観客のワガママとして、どうしてもマリウスにもファニーにも幸せでいて欲しかったし、そうならなかった理由として「女はたくましい、男は強く見えて弱い」なんてことを言って欲しくはなかったんです。

だから舞台ファニーにも映画ファニーと同じような時間が流れて、マリウスがいなくても幸せになってほしいし、パニスと坊やとの生活もきっと幸せであってほしいし、もしかしたら最終的には映画のラストシーンと同様の結末を迎えてほしいなぁという気持ちで、今度はあの別れから更に先の未来を描く舞台マリウスの上演をお待ちしています。

そのときには翼マリウスと瀧本ファニーでお願いしますね!東日本での上演も!!