満ち欠けの物語

結果は現実逃避ポエミーブログ

天国なんかじゃない。~僕らAぇ!groupって言いますねん関西凱旋公演感想~

【注意】僕らAぇ!groupって言いますねん関西凱旋公演のネタバレを含みます。未観賞の方はご注意ください。また、レポではないので舞台の詳細なレポートを読みたい方のご希望にも沿えません。ご了承ください。

 

自分のエンタメ観に直撃する舞台だったので、非常にポエミーで何を言ってるかよくわかりません。

お時間ある方は暇つぶし程度にお付き合いください。お時間のない方、これだけは言える!Aぇ!groupはいいよ!!!!!!はい、ありがとうございました。お帰りいただいても結構です。

 

さて、8/29兵庫県明石市立市民会館僕らAぇ!groupって言いますねん関西凱旋公演を鑑賞してまいりました。

面白かった~、コンサートと演劇とのハイブリッドみたいでなかなか新鮮な構成でした!

 

設定は、「Aぇ!groupという駆け出しのアイドルグループが番組出演を楽屋で待機していると、プロデューサーのミヤザキがやってきて彼らの冠番組『Aぇ!チャンネル』の構想を持ちかける。絶好のチャンスに沸き立つメンバーたちだったが、ミヤザキからは彼ら自身が企画を考えるように言い渡され……」というもの。

歌やダンス、楽器演奏、お笑いやクイズなど彼らの特技を紹介しつつ番組の目玉企画提案に向けて試行錯誤を繰り返す、というのが大まかなあらすじです。

 

内容ホントに面白いんですよ!

関西No.1ギタリストと呼ばれる正門くんを筆頭としてみんな頑張って練習しているんだろうなとわかるバンド、リチャ末の圧倒的美麗ダンス、Jr.ユニットのなかでもかなり上位に食い込めるであろう歌唱力。

関西らしく、随所に笑いも仕込まれています。存在感あるキャラクターを存分に活かしながら要所要所にボケを挟むリチャくん、最年長ながら1番イジられて全力でツッコミを入れる末澤くん、穏やか~な語り口なのに司会してるときにぽんと出るツッコミワードがキャッチーな正門くん、常にアクセルを踏み切ったギャグを連発する大晴くん、小島くんの独特でちょっとシュールな笑いの世界に、小島くんの世界観を体現しつつ、たまに素の17歳らしいツッコミが出る晶哉くんと。

 

しかしながらつらい。

 

何がつらいって、みんな企画出すし頑張るのに、ひとつのセクション終わったらすぐ「アカンな」「これは面白くない」ってダメ出しするんですよ…自分たちで…!!

特技だよ?もっと褒めてあげよ??(モンペ)

推しの佐野晶哉くんが提案したミュージカルパートで、令和は僕らの時代だ!ってノリになってだいぶ盛り上がったあとに「ミュージカルは好き嫌いあるから一般受けしない」と切り捨てられたときには泣きました。

 

でも、これってよくある話だなぁとも思って。

アイドルとして勝ち残るために才能を見つけて磨いて努力して、色んな武器を手に入れて、でも結局歌が上手くてもダンスが出来てもアクロや楽器が得意でも、だから成功するってわけじゃない。

きっと彼らは努力と工夫と自己否定と絶望を積み重ねながらここまで来たんだな…とふと思いを馳せると本当につらい……。

 

そこで追い討ちをかけるように演奏される、「神様のバカヤロー」。

「神様のバカヤロー」は作曲がグループ最年少の佐野晶哉くん、作詞がリーダーの小島健くんの彼ら自身が作ったオリジナル曲。

作った経緯や曲のかっこよさなどは雑誌やラジオで本人たちが語っているので割愛するとして、具体的な時期や事柄を知らなくても、この曲がエンターテインメントの世界で生きている彼らの身近にある不条理と、そこに立ち向かうことさえできないやるせなさや悔しさを表現しているのはすぐわかる。 

正直に言えば、この曲で完全に彼らに落ちてしまった。だってもうAぇ!groupめちゃめちゃロックじゃん!

 

初めての、自作のオリジナル曲、言わば名刺になる曲なんだから、もっとカッコつけてもよかっただろう。

年頃の男の子たちだ。もっと見栄張って「絶対に夢を叶える」とか「俺らについてこい」とか「お前を一生守る」とか歌ってもよかったわけですよ。

それなのに、まだデビューしていない、更にいえばこの曲を書いた時点ではユニット結成も正式に公表されていなかった事務所のアイドルは、正面切って「神様」に中指を立てる曲を作ってきた。

神様の力をどうしようもできない自分の弱さを嘆きながら。

小島くんの反骨精神と純粋な正直さに震えたし、彼の世界を全力で体現するAぇ!groupに痺れました。

 

そして、次に思った。

よく横山くんをはじめとする事務所サイドがこれにGOサイン出したね?

 

もう少し表現を柔らかくすることも可能だっただろうし、制作の経緯は口止めすることもできただろう。

でも横山くんは、小島くんの想いをそのまま伝えていくことを選んだ。

 

みんな、神様の前では等しくか弱い子羊だ。

いつもきっとどこかで、神様の存在に怯えながら、でも神様の力なしに輝くのは難しいと分かっているから、ぎゅっと拳を握りしめて笑顔を作っているんだと思う。

だとするならば、Aぇ!groupを通して、横山くんは、神様にケンカを売ろうとしていないか?

それはきっと、彼が「神様」になる前は彼だって迷える子羊だったし、あるいは今もまだ、時によっては「神様」の力に怯えるひとりだからなのではないか。

そして次の世代のために、自分が何でも許容する懐の広い「神様」になって、「神様」の前だって何を言ってもやっても関係ない、自由な世界を作ろうとしているんじゃないだろうか。

 

バカヤローと言い捨てるだけでは終わらせていない。もうひとつの小島&佐野コンビ曲「ボクブルース」は、同じように無力な自分に弱音を吐きながらも、今度はきちんと「仲間」の存在を示唆している。

傷ついたことを隠さずに表現できるのは、受け止めてくれる相手がいま彼らにはいるからなんだとわかると少しほっとする。

 

オリジナル曲(現時点では代表曲といっていいはず)の「Firebird」では、序盤から「ここは愛の地獄だ」と歌っている。「君が炎なら僕は焼かれよう」とも。

もとより彼らが生きてるのは光溢れる居心地のよく美しい世界なんかじゃない。努力しなければ生き残れない、努力したって成功は約束されていない、スポットが当たらない限り先の見えない真っ暗な場所だ。

Firebird、すなわち不死鳥は永遠の命を得るために自ら火に飛び込んで再生する。

灼熱の地獄なんてものは承知の上で、それでももっと高く永く飛び続けようとするのならば。

 

結局のところ、わたしが示せる愛なんていうものはただ彼らの身体を焼く炎でしかないかもしれない。

どれだけ愛しても「神様」には敵わない。

どこまで行っても地獄は終わらないのかもしれない。

それでも力を貸してほしいと君たちが言ってくれるなら。

Aぇ!groupとミヤザキPが作っていく物語がどこまで続くのか、どこに向かうのか、果たしてハッピーエンドに辿り着くのか、もう少し見てみたい。